ごぼう





大学4年の後輩と軽く飲む
彼は高偏差値大学の学生であり
容姿端麗 女にもよくモテる
しかも笑いの才能まで備えており
酒をおごりたくなくなるくらい
一見 スキが少ない

現在 就職活動中の彼は
当然のように就職を希望する先も
名の知れた 一流企業がずらずらと
「成長」 というワードが
さかんに聞かれる
おれは別に彼の生き方をいいとも
わるいとも思わない
だが、
大企業に勤めてる=尊敬
という図式は成立しないって
自分は思うなあ と言った
これはおれ自身がそういうものを目指した経験がないからかもしれない
甲子園で野球をすること
国立競技場で球を蹴ること
武道館でライブをすること
その大変さは 一度でもその方向に
全力をかたむけた人間に
わかるのだろう
でもでも
やっぱり成長て言葉には 引いてしまう
会社という存在の口癖
耳にタコができた
「成長!ひとりひとりの成長!
本年度の目標! 成長!」
・・お腹が痛くなる
いつしかおれの目標は「整腸」に
なっている

上に伸びて はたから見て分かる
成長だけが はたして成長なのか
誰にも見えなくても
下に下に しつこく根を張って
突風ももろともしない
ゴボウのようなしぶとさが
人間の味ではないかな
と思うがなあ


帰り際、
「おれの年収をこえたら
一銭も出さんからな」
とおれ



「1年目でこえるよ んなもん」


たのもしい後輩だ



もり