泳げレジ袋



最近、近所のコンビニに新しいバイトの男の子が入った
彼は非常に動きがゆったりしている
ひとつひとつの動作がなんとなく
「かっこつけて」いる感じだ
札の数え方 タバコの取り方 etc
レジ袋を 一度 空中でくぐらせてから
品物を入れる
レジ袋いらん言うたやん

表情からは自信を感じさせる
円滑なレジに慣れていると彼のような接客はイライラする人が多いと思う 
だがここ数日は、そんな彼の動きを待つ 間 が好きだった
好き、は言い過ぎか
ほほえましかった
彼は深々とお辞儀をする ほんとうに深々と

そんな彼が今日行くと変わっていた
あまりにも動作に違和がない
レジ袋をいったん泳がせる「タメ」
もなくなっていた
店長か誰かに注意でもされたのだろうか
「こっちのほうが効率的だよ」

お金をいただく以上、
「効率」という言葉を出されると
おれはぐうの音も出ない
効率を求められる社会に
「いや、個性ですから」
「ムダを愛してますから」
と言えるほど 強くできてない
けれど、いざ効率重視のやり方で
まじめに働いて
有給を1日消化することも難儀な会社に対しては
いったい何のための効率だよッ‼︎
ってツッコミは激しくいれたくなる

今 またコンビニで彼に会ってきた
もう73番にも迷わない
レジ袋は泳がない
しかし お辞儀だけは、深い



もり