植字



免許更新のために
府中へ出かける。
その流れ作業にあっけにとられた。
は、はやい・・。
高速のベルトコンベアに乗っている気分。
総合窓口から支払窓口、
支払窓口から視力検査、視力検査から写真撮影・・
あ、
今までの証明が
たちまち無


その穴から
何が見える?

黒板 14:10開始
「安全第一」

1時間の講習の最後に
さだまさしの『償い』が
けっこうなボリュームで流されたのが印象的だった。
おれも下の名前は「ゆうちゃん」


試験場を出、生まれて初めて 献血 をしてみることにした。とくに理由はない
色々と説明を受け必要事項に記入し、問診を受け、スポーツドリンクを
飲まされ準備完了

いざ献血車に乗り込んで血を抜きはじめたのだが・・

ドクターストップがかかってしまった

半分を過ぎたあたり
急に左腕が突っ張ったかと思うと、胸焼けと同時に
視界がはじから真っ暗になってきた。
旧免許証に開いた穴のように視界の真ん中だけにまるく
光が見える・・ああ、何だこれ、うえっ

「今日はもうやめましょう」

献血できるギリギリラインの低血圧が原因だったのか。
てかおれ低血圧だったのか。看護師さんらに介抱され、
今までこんなに高く上げたことない、ってほど足を高く
上げさせられている最中
朗読のとき
ほとばしっている自分が
低血圧なのを ひとり笑う。
目標の400mlには届かずも
何とか310mlを献血できたのはよかった。
クッキーとカフェオレをいただき、30分休憩して1時間半かけバイクで帰る。
「しかもすごく元気」とか言ってる場合じゃなかった。
ひどく疲れた


うん、
毎秒毎秒いろんなことがある
日々ツイッターで連投しているひとですら
そんなん生活のうちの、
九牛の一毛でしかないのだろう
てか肩だいじょうぶなのかな


自分ではその場その場で真剣にやっていることでも
あとから思えばひどくバカらしいことは
しょっちゅうある
そんなんばっかりだ。
最近 物事がうまくいかなくなったとき 
未来の、
クソジジイ、
になった自分が、
縁側に座ったまま 言ってくる

「まあ精一杯もがいたらいいわ、妬みうらみも多少気張らなネタにもならんで」

言ってくる うざい。

でも縁側からの逆算、
ていう思考はおれにはいいのかもしれない。
土壇場の客観はユーモア(生)をうむ。
低血圧は長生きしないよ、
と医者に言われたが。
本当か。


日々 少しずつ実感するのは、
ある日何か劇的な事があって
人生が決定されていく
そんなのは、稀だということ。

おれもそういう記念日を
つねに待ち望んでしまうけど
シーソーに
一個ずつ 一個ずつ
小石を積むようにして
今までとはちがう
方向にゆっくり傾いていく
それにある日はっと気付く
そういうもんかもしれんな、と最近は思う。

そう、
石を積む小説の話






蛇口さんにお借りした小説
『偶然の音楽』
夏の課題図書を
遅ればせながら読了した。
250P強に2ヶ月を費やすとはなかなかの遅読家である。
でも終盤は貪り食うように読んだ。

あらすじは割愛。

映画でいうならば
『真夜中のカーボーイ』や
おれの大好きな『スケアクロウ』に近い雰囲気を感じた。
映画でいっちゃダメだろう。

( ここから下はネタバレなので注意 )

主人公はポッツィに出会う以前の、旅のどこかですでに
死んでいたのではないか。
ポッツィとの出会い〜ラストまでは、その死を受け入れるための、現実世界ではほんの数分の走馬灯だったのではないか。自らを何らかの形で納得させるための。

放浪〜 人生をかけたポーカー 〜 檻のなかで壁を築く
という予期できない
ストーリー展開に惹かれた。






「もり、

おまえは壁を乗り越えることから逃げている。

そこそこ頭がよくて
機転もきくから、
いつも壁を避けることを考えついてしまうんだよ。

それはおまえの
弱点でもある 。

おまえは成長できない」

昔 キャバクラの店長に言われた言葉。


おれのまえに壁がある
中途半端な高さの
未完成の壁が
おれはこれを、今のうちに
越えるべきか いや、
そこに新たに石を積むべきなんだろうか

縁側は この壁を隔てた
どちら側にあるのか分からない

ただ声は、この辺から
している



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