余白を白く塗ったのは誰だ



11月に入って早々、
入院していたばあちゃんが天国へ旅立つ
容態急変の連絡を受けて、高知に帰るための夜行バスに乗る直前だった
つい一年前まで いっしょにカラオケへ出かけたり 雑草を引いたり タケノコを掘ったりしていたのに。
新宿発のバスが高知につくまで、いつも以上にこたえる12時間だったが 心は意外にも平静を保っていて
ばあちゃんにまつわる詩をかいたりした
不謹慎だろうか
薄情だろうか

いざ到着して 車でばあちゃんちへ
ひたすらに眠る
ばあちゃんに会ったら
号泣した
もうそれだけだった

結局葬儀には出なかった。
葬儀の日、おれは東京にいて
ばあちゃんの詩を朗読をしていた。


結婚式をあげる友に
子どもが生まれた先輩
入院する職場のひとと
誕生日を迎えた恋人たち
矢面に立つ大統領
相変わらずの自称◯◯

いろいろだ。

ひとにも四季があるのなら
できるだけ四つとも見ておきたい
冬だけみて つまらんとか言わずに
春だけみて美しいなんて言わずに
その移り変わりが早いひともあるだろう
遅いひともあるだろう
おれは 読めない
寝る前 春だったのが
寝てる間に
夏と秋がぴゅん、と 過ぎていて
かき氷も 秋刀魚も食ってないのに
朝 起きたら
しんしんと
雪が降り積もっていたり
その逆もあったり

いろいろだな。



奈良に住んでいる彼女の誕生日を祝いに行く

フランス料理のコースをはじめて予約してみる
と いっても箸で食べる
やさしめの店、

何かどの料理もひとくちサイズで
いっぺんに出してくれれば10分とかからないようなものが
2時間かけて ゆっくりと運ばれてくる
厳粛な雰囲気のなか、
ゆっくりと食べすすめる。
こういうムードだからこそ
爆笑させるような話題を探すのもまた面白、である。
時間をかける ということはとても新鮮で 刺激的だった
いつもスマホ片手に牛丼をかきこんだりしている自分は
「食う」ということを考えた
味はよう分からんかったが。

グラスに少しのワインをちびちび
2時間かけて飲む
結局 こういうゆったりした時間にも考えまくってるのが
貧乏なんだな
たまさかのおーせ。

距離はつらい
ことも多々
でも現世ならどこでも近いんじゃないか
ばあちゃんがあの世へ行ってしまった今、
そう思ったり。




朗読と労働とそれなりの未来
とか考える
未来があるとなぜ信じて疑わないのか?
考えまくってる
急降下 急上昇
極端だったこれまでに
あわい グレーを探している
時間をかけたい
今を生きたい
いやそれすらも傲慢か

生かされている
そんな気がしてきた
贅沢なんだ 幸せだ
トドメを刺されるまえに
形を変えたい。




通信制限とともに生きる夜
テレビもねえ
ラジオもねえ
パソコンネットに
つないでねえ

時間をかけてる

余白を白く塗ったのは
いったい誰なんだろう



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